まじこい

真剣で私に恋しなさい!  初回版

真剣で私に恋しなさい! 初回版

あらすじ


――なにげない集まりが、かけがえのない時と知らずに俺達は過ごしていた。


川神学園、2年生の直江大和には大切な仲間達がいた。
男4人と女3人。幼い頃から一緒にバカやって今まで育ってきた。
色々あったけど、今でも仲良しの皆。心地よい空間。


そこに新たな仲間達2人が加わり、より周囲は賑やかになっていく。
しかもメンバーの女性は全て武道をたしなみ、血も武士の系譜という頼もしい構成。
凛々しい侍娘たちに負けずに頑張れ、男達。
2009年4月、物語が動き始める――

ギャグゲーが大好物でありながらタカヒロゲーは全くプレーしたことがなかった(君あるはアニメで視聴済み)。これが初体験。設定やキャラ造形に激しくデジャヴを覚えたので様子見を決め込んでいたが、発売後はどこも高評価ばかりで気になってしまい後追いでプレー(今更感想を並べ立てるのだから当然である)。
以下、感想。


シナリオ ★★☆
メインヒロインの5人のみならず、男キャラやサブヒロイン√も完備しているため分岐が異常に多く人によっては短長と感じてしまうかもしれない。恋愛ではなく、友情や仲間をメインテーマに置いたため、半ば必然的に超大作化してしまったのだろう。しかし、それでも√が足りない(いかん、これ以上はキャラクター欄で語ろう)。
サブ以外の各ヒロイン√ごとに本作のエッセンスである学校行事が細分化されているのでだれる事は少なく、ヒロインの心を徐々に開いていく攻略性はどれもおおむね同じではあるが、テーマもヒロインごとに違ったものになっている。しかし、話の本筋だけ抜き出してみれば直球というよりはベタと評したほうが適切(つまるところ退屈)のレベルではあるし、序破急のバランスの悪さや打ち切りのような終わり方が多かったのはいかんともしがたい。純粋にストーリーだけで評価するのなら、評価できるのはワン子とクリス√(クリス√はベタの真骨頂でありがならエロゲーとして一番バランスが良かった)くらいか。
トゥルーシナリオであるリュウゼツラン√も話の本筋に全く絡んでこないサブキャラが前触れもなく唐突にメインに据えられるため、取って付けた感は否めなかった。「話の展開がバレバレ」以前の問題である。今作をプレーしてタカヒロの真骨頂はキャラ造形であると受け取ったが、もっとプロットを煮詰めて話に深みを与える必要性を強く感じた。実力があるライターだけにキャラゲーにシナリオを求めてはいけないとはあえてしない。


お話/傾向:
バトル ★★★
バトル描写が特別巧い訳ではないが、これは小説ではない。演出次第でどうにでもなる。直球変化球を織り交ぜた展開はるーすの影響かな?。あくまでコップの中の嵐ではあるが、充分楽しめる出来。
笑い ★★★★
パロが多い(マイナスの評価を含意)と聞かされていたのが恥ずかしながら今まで未プレイだった主要因。声優を使ったパロの多用はさすがにどうかと思うが、基本はキャラを生かした掛け合いで笑いを取るタイプだったので安心した。笑えるというよりは楽しいドタバタ劇に近いか。いや、それでも充分笑わせてもらいましたが。
感動 ★★☆
ワン子√のみ。海での四者面談シーンが一番かな。英雄とたっちゃんの深すぎる愛に感動そして同情。愛されるってのも才能だよね。京の深すぎる愛がギャグとして昇華してるのとは対象的だ。対比させるとそのギャップに思わず笑いがこみ上げてくるのでやめておこう。
麻生 マイナス☆×100
これはさすがに色んな意味で拙い。時事ネタが諸刃の剣であることは言うまでもないし、民主党政権になった昨今、既に古臭く見える。政治思想に深く首を突っ込まなかったのは評価する。


キャラクター ★★★★★
これは★5つしか付けられない。総勢50名近くをキャラ立ちさせることの難しさは誰でもわかります。まぁ、あれだけの√の超細分化をこなしても収まらなかった「○○が攻略できない! ファンディスク作れ!」の大合唱が全てでしょう。キャラ造形やシナリオの梗概に「なんだ、リトバスのパクりか」などと鼻白んだ過去が正直おぞましい。キャップ―恭介、岳人―筋肉、京―美魚(同名も相まって俺つばの山科さんが真っ先に思い浮かんだが……)あたりは今でもガチだと思うが、正直どれも魅力は段違い(キャップ除く)である。短長と言われかねないボリュームや先の読めるストーリー展開が苦にならないテンポの良さは緻密かつ膨大なキャラの書き分けに成功したに依るところが大きい。声優さんの頑張りにも拍手をたたえたい。
ちなみに俺の嫁はいませんでした(心底どうでもいい)。


絵 ★★★★
燐月の人。まじこいとは全く違うタイプのゲームでありながら世界観に適応、なおかつキャラの書き分けまでしっかりしてる所を見るとかなりの実力者ですね。しかし、どちらかと言うと燐月の時の絵の方が好み(プレーしたことはない)。


音楽 ★★
OPが電波なのはタカヒロ的にはお約束なのだろうか?。KOTOKOさんの歌うEDは最高でしたが、きただに曲の使い方が中途半端なのは気になった。使い所が難しいのは分かるけど。他は特に印象に残らず。


エロ ★★★
あくまでキャラゲーにしての評価であるが、頑張っているかと。ただ、ストーリー内に織り込まずアフターシナリオに逃げたのはマイナス要素。クリスのみアフターシナリオを作らなかった所から見るとタカヒロ本人も色々と思うところがあるのだろうが。


システム・その他 ★★★★
安心の戯画システム。どうせならパルフェこんにゃくのような分岐点のビジュアル化はして欲しかったが、おおむね満足できる出来。演出面も○。


総評 ★★★★
キャラを生かした掛け合いに特化したキャラゲーとしか言えない。エロ―及第点。シナリオ音楽共に及第点未満赤点以上。一方面に特化しているため著しくバランスに欠け、なおかつシナリオの長さにネックがあるものの、特化した方向性とコストパフォーマンスから見て敷居の低さはピカ一(ただし、一般層に受けるものではない)と言える。ギャグゲー好きとしては大満足の出来ではありましたが、シナリオの尺に相応しい深みが無かったのが残念ではある。あえて無理に話に山を作らない選択肢は当然あり得たと思うが、それでは多数派の求心力に訴えることは難しい。やはりシナリオの強化がタカヒロの今後の課題かと思われる。