カタハネ

カタハネ

カタハネ

あらすじ


この物語は、セロが白銀の村へココを連れて行く旅に、友達のワカバとその弟ライトが同行する形で始まります。
セロの目的はココのメンテナンスですが、同行するワカバは勢いでエントリーしてしまった演劇祭のため、脚本を書きながら各地で役者を探そうと画策中。
それはいわくつきの悲劇『天使の導き』と全く正反対のハッピーエンド版で、史上最大の逆賊と名高いアインが『実は良い人だった!』というトンデモな内容。
そんな代物だけに、「役者すら見つからないのでは?」と不安を抱えながらも、偶然か運命か、主役にふさわしいアンジェリナやベルを見つけて大はしゃぎ。
果たして、ワカバたちは無事にアンジェリナたちを仲間に入れて、劇を成功させることができるのでしょうか?

少しというか、かなり遅ればせながら前ブログからの予告通り、カタハネ。人知れず悔恨の涙を流した某ぼるしち(よそくーを超えてー つづくー♪以下略)の事は一先ず脇に置いて、れびうしてみることにする。


お話 ★★★☆
架空の国の政治や歴史を舞台とした群像ファンタジーモノ。いわゆる世界名作劇場系と言えますか、終始まったりモードで世界に浸れたりする。全体構成は完全な一本道で二周、三周目と周回ごとにテキストが多少の変化をしてくるのみ。展開の単調さに少しもの足りない部分を感じることも2周目、3周目は作業プレイをせざる得ないことも構成上仕方なしと割り切るしかない。
しかし、一見問題アリに見える物語全体の構成も完成度に限って言えばほぼ完璧と言っても差し支えなく、非常に洗練された造りになっている。
お話/傾向:
ファンタジー ★★★★
クロハネ編では謀略渦巻くドロドロの政治劇がメインではあるものの、基本線はまったりファンタジー。本作のゲンガーである笛氏のタッチの柔らかい筆致も然る事ながら、テキストもその柔らかい世界観を形成するのに一役買っている。時折、睡魔を呼び込んでくれるのが玉に瑕なんだけども。
感動 ★★★★
所々に散布した伏線を1週、2週と少しづつ丁寧に回収していき、3週半ばにクロハネ編ラストがあり、そしてシロハネ編(全体の)のラストに怒濤の伏線回収。若干、回収されてない部分もありますが、まあそれはこれで。
話の内容も然る事ながら、構成の妙と言いますか、3週終えることのみにも感動が与えられるのがカタハネの良い所。
いざ終わってみるとシスター(人形)とお姫様の悲恋物語はなんだったのかと疑問がわき起こる事必至!、シロハネ編ラストにあるココの激白が全てを持って行く。万斛の目の汗となって流れ出す――ってのはちょっと大げさなのかもしれないが、週を増ごとに露わになっていく謎に泣きはせずとも、多くのカタルシスを得ることは出来るでしょう。色んな意味で巧です。
キャラ ★★★☆
相反した世界観を持つシロハネ編、クロハネ編ともども決して話を展開させるための「感情のない駒」に成り下がる事なく、シロハネ(現在)とクロハネ(過去)を結ぶ歴史の語り部であるココを中心にそれぞれ自分の領分の中で生き生きと動き回ってます。これぞ群像劇のお手本。
絵 ★★★☆
絵のタイプがタイプだけに凡庸性(と実用性w)は皆無。しかし、カタハネの世界観にはこれ以上の絵師はいないと断言出来る。謗りを承知で言うと、ひなたぼっことカタハネの笛氏だけは別格と思っていたり。僕夏も悪くないけど、あの頃と画風変わりすぎだからね。それと、背景も忘れてはいけない。minoriすげえ。
音楽 ★★★★
OPテーマAlea jacta est!、シロハネ編エンディングit's just farewellとも秀逸。しかし、なんと言ってもグランドENDのMemories are here(ちょっとディズニーっぽい)が全てでしょう。演出も相まって涙ちょちょぎれ。明らかに誘ってますな。ああ、誘われてやるよ。


エロ ★
世界名作劇場系の世界観に合っているなしはともかくとして、明らかに好みが別れるタイプのエロ。百合。3分の2以上が百合シーン。エロゲに実用性を全く求めていない漏れとしては百合もアリではあるが、しかし、どちらにせよエロが蛇足であることに変わりはない。恐らく笛氏の趣味なんでしょうけど、飛道具過ぎて付いていけないプレイヤーが多数。
その他 ★★★☆
派手さはないが、絵・テキストと渾然一体となってさも絵本でも読んでるかのような独特の世界観を演出している。特にフォントは世界観によく合っているかと。ムービーもブランドの規模にしては頑張っている方。
総合  ★★★☆ 82
埋もれている名作(ワゴンに山積みされている意味でも)として、不可解にセールス以上の知名度を得てしまっているなんとも不憫な作品。似た境遇にある瀬戸なんとかセンセの某スワンソングは未だ高値で取引されているだけ(再発されたから今はそれほどではないかも)マシなんですけど、エロゲスノビズムの格好の標的になってる分、不憫さはさほどかわらんかも。萌えゲー全盛の中、なかなか正当な評価が下されない悲しい世界ではあります、エロゲ界。奈須きのこと瀬戸口、べっかんこうと笛、何が違うのかと。売れないシナリオライター涙目信者としては開き直るしかあるめえか。あるめえな。